低血圧の種類と特徴
起立性低血圧
起立時の収縮期血圧が21mmHg以上も低下して、めまいや失神などの症状を伴う場合を起立性低血圧といいます。
朝礼中に突然倒れる人や、満員電車の中で顔面まっ青になっている人などが起立性低血圧の症例です。
起立性低血圧には、立ってすぐ倒れる直後型と、立ってからじわじわと血圧が下がって、ついに倒れるという遅延型、その中間に位置する中間型などがあります。
低血圧でない健康的な人でも起立すると、大量の血液が心臓より下の下肢や内臓などに貯留されます。
そのため心臓への静脈還流は減少し、心拍出量が低下して血圧は下がる方向になります。
ただ、通常健康的な人ではさまざまな代償機構が働いて、血圧の一定値は維持されます。
ところが自律神経系の異常などで、この代償機構がうまく機能しなかったり、もともと循環血液量が少なかったりすると、血圧を維持できなくなることがあります。
起立による低血圧は、シャイ・ドレーガー症候群、パーキンソン病、糖尿病性神経障害などの自律神経疾患にもみられます。
高齢人口の増加に伴い、高齢者の起立性低血圧も重要な問題の一つになっています。病因によって、それぞれ治療法は異なります。
本態性低血圧
明らかな原因や基礎疾患がなく、(横になった姿勢)、(立った姿勢)、(座った姿勢)など体位にも関係なく、いつも血圧が低く、めまい、肩こり、疲れやすい、冷感、不眠など、いろいろな自覚症状を伴うものです。
症状は血圧調節に関与する電解質や水分のバランスの失調や心機能の低下などがあるために生じます。
症状は1日のうちでは午前中に強く、1年のうちではむし暑い季節に悪化しやすい傾向があります。
多くの愁訴をもつために、社会生活に順応しにくいこともあり、当人にとっては深刻な問題です。
軽視されがちで単なる寝坊、怠け者などと誤解されがちです。
食後性低血圧
食事の後に血圧がどんどん下がって、ひどいときには冷や汗や失神を伴います。
食事をすると通常、腹部内臓血管が拡張し、血管抵抗が下がります。
健康な人ならば心臓から送り出す血液が増えたり、四肢の血管の収縮が起こったりして血圧を維持する働きをします。
ところが、自律神経系に障害があったりすると、食事によって何らかの因子が働き、食後に血圧は下がります。
シャイ・ドレーガー症候群
起立性低血圧を引き起こす代表的な疾患にシャイ・ドレーガー症候群があります。厚生省指定の特定疾患になっている難病の一つです。急に立ち上がったりすると血圧が下がり、ときには失神する、尿が出にくくなる、インポテンスになる、汗が出ないなど自律神経に障害が強く出るのが特徴です。病気が進行すると、ベッドで起き上がっただけでも血圧が下がります。
初老期の男性に発症することが多く、早期に治療すればいろいろなコントロールの方法があります。思い当たる症状があれば、専門医を訪ねましょう。